Jリーグのネーミングライツって、企業活動的にどれだけの予算を割いているのだろう?
私の地元・山形県のモンテディオ山形のホームスタジアム「NDソフトウェアスタジアム」。県民は親しみを込めて「んだスタ(NDスタ)」と呼んでいます。そんなことを懐かしんでいると、最初の疑問が湧いてきました。
NDソフトウェアは売上情報を開示していませんでしたが、Jクラブの中には、上場企業がネーミングライツをもつ企業も多いです。ネーミングライツの金額、売上や販管費に占める割合を調査してみました。
ネーミングライツ(命名権)とは?
そもそもネーミングライツとは、スポーツ施設や文化施設などの名称に、企業や団体の名称やブランド名を冠する権利のことです。
具体的には、例えば、東京にある「東京スタジアム」は、味の素とネーミングライツ契約を結んでおり、「味の素スタジアム」と命名されています。
ネーミングライツは、1990年代後半以降、スポーツや文化施設等の名称に企業名を付けることがビジネスとして確立しました。
日本では、1998年に味の素スタジアムが初めてネーミングライツを導入しました。その後、Jリーグのスタジアムを中心にネーミングライツが導入され、近年では、地方自治体もネーミングライツを活用するようになりました。
ネーミングライツのメリット
ネーミングライツには、企業と自治体にそれぞれメリットがあります。
ネーミングライツは、企業と自治体双方にとってメリットがあります。企業は、企業名や商品名の認知度向上や企業イメージの向上、新たな顧客層の獲得といったメリットを享受できます。自治体は、施設の運営費の確保や施設の知名度向上、地域活性化といったメリットを享受できます。
このように、ネーミングライツは双方にとってWin-Winの関係であると言えるでしょう。
J1全チームのネーミングライツ企業の一覧リスト
23-24シーズンのJ1全クラブのネーミングライツ取得状況を一覧表にまとめました。
クラブ | 本来の施設名 | 命名後の施設名 | 社名 |
北海道コンサドーレ札幌 | 札幌ドーム | – | – |
鹿島アントラーズ | 茨城県立カシマサッカースタジアム | – | – |
浦和レッズ | 埼玉スタジアム2○○2 | – | – |
柏レイソル | 日立柏サッカー場 | 三協フロンテア柏スタジアム | 三協フロンテア |
FC東京 | 東京スタジアム | 味の素スタジアム | 味の素 |
横浜F・マリノス | 横浜国際総合競技場 | 日産スタジアム | 日産自動車 |
湘南ベルマーレ | 平塚競技場 | レモンガススタジアム平塚 | レモンガス(非上場) |
川崎フロンターレ | 等々力陸上競技場 | – | – |
アルビレックス新潟 | 新潟県立鳥屋野潟公園新潟スタジアム | デンカビッグスワンスタジアム | デンカ |
清水エスパルス | 静岡市清水日本平運動公園球技場 | IAIスタジアム日本平 | アイエイアイ(非上場) |
名古屋グランパス | 豊田スタジアム | – | – |
京都サンガF.C. | 京都スタジアム | サンガスタジアム by KYOCERA | 京セラ |
ガンバ大阪 | 市立吹田サッカースタジアム | パナソニック スタジアム 吹田 | パナソニック |
セレッソ大阪 | 長居陸上競技場 | ヤンマースタジアム長居 | ヤンマーHLD(非上場) |
ヴィッセル神戸 | 御崎公園球技場 | ノエビアスタジアム神戸 | ノエビア(非上場) |
サンフレッチェ広島 | 広島広域公園陸上競技場 | エディオンスタジアム広島 | エディオン |
アビスパ福岡 | 東平尾公園博多の森球技場 | ベスト電器スタジアム | ベスト電器(ヤマダHLD) |
サガン鳥栖 | 鳥栖スタジアム | 駅前不動産スタジアム | 駅前不動産HLD(非上場) |
Jリーグファンからすれば、聞き慣れた名前が多いのではないでしょうか。ただ、何の事業を営む会社かと言われると、すぐには答えられない会社も多いですね。
ネーミングライツが広告費に占める割合は?|上場企業でJ1のネーミングライツをもつ企業
上でまとめた企業のうち、上場企業がネーミングライツをもつクラブに絞り、「ネーミングライツが広告費に占める割合」を算出してみました。かなり大雑把ですが、見ていきましょう。
算出に用いた情報源は下記の通り。
- 売上高・販管費:バフェット・コード
- ネーミングライツの価格;X(旧Twitter)の投稿
※複数年契約の表記は、単年の金額で計算
クラブ | 命名後の施設名 | 企業名 | 売上高 (百万円) | ネーミングライツ費用(百万円) | 販管費(百万円) | ネーミングライツ/販管費 |
---|---|---|---|---|---|---|
柏レイソル | 三協フロンテア柏スタジアム | 三協フロンテア (9639) | 50,003 | 非公表 | 13,524 | – |
FC東京 | 味の素スタジアム | 味の素 (2802) | 1,359,115 | 230.0 | 132,073 | 0.17% |
横浜F・マリノス | 日産スタジアム | 日産自動車 (7201) | 10,596,695 | 150.0 | 1,336,740 | 0.01% |
アルビレックス新潟 | デンカビッグスワンスタジアム | デンカ (4061) | 407,559 | 47.3 | 70,017 | 0.07% |
京都サンガF.C. | サンガスタジアム by KYOCERA | 京セラ (6971) | 2,025,332 | 100.0 | 436,427 | 0.02% |
ガンバ大阪 | パナソニック スタジアム 吹田 | パナソニック (6752) | 8,378,942 | 216.0 | 1,947,371 | 0.01% |
サンフレッチェ広島 | エディオンスタジアム広島 | エディオン (2730) | 720,584 | 33.0 | 191,690 | 0.02% |
アビスパ福岡 | ベスト電器スタジアム | ベスト電器(ヤマダHLD<9831>) | 1,600,586 | 36.0 | 404,705 | 0.01% |
ネーミングライツと広告費を計算して気づいたこと
どの企業も、販管費に占めるネーミングライツの金額の割合は小さく、0.01%~0.17%でした。
1%どころか、0.1%以下の金額となれば、「ネーミングライツのお陰で消費者への認知拡大に繋がれば良いな、認知拡大につながらなくてもまあ仕方ない」くらいのスタンスなんだろうと思います。
販管費は給与手当、広告宣伝費、採用日なども含んでいるので、企業がプロモーションにかける費用「広告宣伝費」のみの数字がわかれば、より正確な数字が出せると思います。上場企業の広告宣伝費のみをまとめたサイトが見つからなかったので、今回は販管費を用いました。
Jリーグのスタジアムのネーミングライツ取得は、企業の売上拡大につながるかどうか、効果が見えにくい指標だと思います。「ネーミングライツをとってから、商品の売上が1.5倍になった!」というデータを示すことができない以上、数字で合理的に意思決定をする企業がネーミングライツに手を上げることはあり得ないと思います。
ネーミングライツを取得している企業は、経営者がスポーツ普及や地域貢献に一定の理解を示してくれている企業だと考えて間違いないと感じます。
Jリーグファンとしては、スタジアムを安定して運営する資金を出してくれる企業には感謝しかありません。
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