注目企業の決算情報を様々な角度から考察し、ビジネスパーソンに役立つ決算情報を提供している「決算が読めるようになるノート」というメディアがあります。noteで連載し、核心に迫る後半の内容は有料購読で読むことができるもので、私は前半部分だけをよく眺めていました。
500円のお金を払う余裕がない・・・
というよりも、
自分で考察してみないと、企業や決算を見る目が養われないのでは?
と思うようになりました。
一括資料請求モデルへの疑問
今回掘り下げたいのはこちらの記事です。
見出しに惹かれました。「メディア企業がストック収益をつくるには」というのは、私の会社でやっている事業とドンピシャで参考になりそうな内容でした。
メディアで収益をあげる企業は増える一方ですが、コンテンツマーケティングで取得した顧客情報に対して、リード情報を送客して手数料をもらうような「フロー」のビジネスモデルが多い印象があります。代表的なのは、一括資料請求サイト。各分野で資料請求サイトはありますが、売上を分解すると以下で表せます。
売上=リード単価(1件◎円)×リード提供企業数
わかりやすい例でいうと、引越しの一括見積もり。
経験したことのある方もいると思いますが、引越し予定日時や住所、電話番号などを比較サイトに入力すると、直後に複数社から営業電話やメールがひっきりなしに届きます。
サイト運営社からすると、「より多くの企業に顧客情報を渡した方が儲かる」仕組みになっています。ただ、比較サイトでもらった情報全部に目を通している人はいるのでしょうか・・・?
個人的には、一括資料請求をはじめとするメディアによるフロー型のビジネスモデルは、ユーザーのため(=課題解決)になっている気がしないです。もちろん、全ての情報を見比べて比較したい方にとっては有益なことは理解しますが。
ストック型収益への転換|カラダノートの戦略
前置きが長くなりましたが、カラダノートの事業を掘り下げていきましょう。カラダノートの基礎情報を整理します。以下は同社の事業概要です。参照している情報は、こちらのIR情報をもとに記しています。
株式会社カラダノート 2023年7月期第1四半期 決算説明資料(2022年12月9日)
事業ドメインは3つあります。
①家族サポート事業
②ライフイベントマーケティング事業
③家族パートナーシップ事業
同社の有価証券報告書には、こんな記載がありました。
中長期的な事業成長に向け、家族サポート(ストック型ビジネス、保険代理事業「かぞくの保険」、宅配水事業「カラダノートウォーター」)の拡大に向け、フロー型収益からストック型収益への切り替えを進めてまいります。
有価証券報告書-第14期
公式に、「これからストック型ビジネスに切り替えていく」方針を表明しています。こちらで書かれている「かぞくの保険」「カラダノートウォーター」とは、どんな事業なんでしょうか。
かぞくの保険
子どもが生まれたばかりの世帯を対象に、保険を見直すきっかけを提供する事業です。相談したユーザーには、まずFP(ファイナンシャルプランナー)との無料相談をセッティング。その後、生命保険や損害保険会社との商談に進んでもらうという仕組みですね。
最初にFPとの面談を挟むことで、ユーザーは保険商品を売りつけられている感覚を持ちにくい側面はありそうです。お金のプロに相談した後なら、ユーザー自身で保険などについて情報を調べることは容易に想像できます。
ユーザーが何らかの保険に加入したら、カラダノートはその企業から、毎月の保険料のうち一定割合を受け取るという「ストック型」収益構造になっていると読み取ることができます。
カラダノートウォーター
こちらも同様のモデルです。
家族や赤ちゃんには、「安全で美味しい水が大切」とのメッセージを伝え、ユーザーにウォーターサーバーと契約してもらうサイトになっています。
サイト経由でユーザーがウォーターサーバーを契約すれば、毎月の費用の一定分をカラダノートが受け取る仕組みです。たしかに、「子どもの健康に気をつけるならウォーターサーバー」と言われると、子どもの顔が浮かんで検討してしまいそうです。
ママ友の立ち話で、
ママA「子どもの安全のためにウチはウォーターサーバーだわ」
ママB「(え、水道水の我が家は子どもの安全に気を遣えてないのかしら・・・。帰ったら検索して、パパに相談しなくちゃ)」
なんて状況も出てくるかもしれません。
結論:継続利用サービスへの送客で「ストック型収益」を実現
保険とウォーターサーバーに共通するのは、定期的・継続的に支払いが発生するサービスである点です。これを一般化すると、冒頭の問いに答えを出せそうです。メディア企業がストック型収益を出すためには、
ユーザーが定期的に支払うサービスを扱う企業に対し、顧客情報を提供する。その見返りとして、毎月の料金の一定割合をメディアが受け取るシステムを構築する
「決算が読めるようになるノート」の問いに沿って回答するなら、
カラダノートは、既存のメディア事業で得られた「顧客情報」を活用することで、ストック型収益の成長を加速させている
と言えると思います。
カラダノートは創業以来蓄積したコンテンツマーケティングの知見や顧客情報数をもっています。その「資産」を生かして、顧客と親和性の高い保険、ウォーターサーバーへと事業を展開していることがわかりました。思いつくところだと、電気代、スマホ代なども毎月発生する費用です。他の分野への横展開もしやすいモデルですね。
カラダノートの分析・考察をしてきました。「決算が読めるようになるノート」との答え合わせをしたい気持ちもありますが、自分の企業分析スキルが向上してから購入してみたいと思います。
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